気の合う友人とのルームシェア。家賃を抑えながら広い部屋に住めたり、仕事で疲れて帰っても「おかえり」の声が聞こえたり。一人暮らしにはない楽しさや安心感を想像すると、ワクワクしますよね。
しかし、いざ具体的に考え始めると、「どんな部屋を探せばいいんだろう?」「契約や審査って、友人同士だと難しい?」「仲の良い友達だからこそ、お金のことでギクシャクしたくないな…」といった、たくさんの疑問や不安が浮かんでくるのではないでしょうか。
ご安心ください。この記事では、友人とのルームシェアを成功させるために不可欠な、物件選びのコツから、複雑な契約手続き、そして入居前に絶対に決めておくべきお金や生活のルールまで、あなたが抱える不安を解消する知識を網羅的に解説します。
【準備編】友人とのルームシェア賃貸、始める前に決めるべき絶対ルール

友人とのルームシェアで最も多い失敗の原因。それは「友人だから大丈夫だろう」という、根拠のない信頼からくる準備不足です。育った環境が違えば、価値観が違うのは当たり前。特に「お金」と「生活習慣」については、後から言い出しにくいものです。
円満な共同生活を送り、大切な友人関係を維持するために、まずは「初めにルールを決めること」の重要性を理解しましょう。
なぜルールが必要?「親しき仲にも礼儀あり」が成功の秘訣
「お金のことは言い出しにくい」「これくらい許してくれるだろう」といった小さな甘えや遠慮が、積もり積もって大きな溝になることがあります。
最初に客観的なルールを決めておくことで、何か問題が起きても「そういえば、最初にこうやって決めたよね」と、感情的にならずにルールに立ち返って冷静に話し合うことができます。面倒に感じるかもしれませんが、この最初のひと手間が、未来の「気まずさ」や「トラブル」を確実に防いでくれるのです。
お金に関するルール(家賃・光熱費・初期費用)
最もシビアで、最もトラブルになりやすいのがお金の問題です。以下の項目は必ず全員が納得するまで話し合いをしておきましょう。
家賃・共益費の分担方法(均等割?収入割?)
分担方法は主に2つです。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分たちに合った方法を選びましょう。
分担方法 | メリット | デメリット | こんな人におすすめ |
均等割 | 分かりやすく公平。管理が楽。 | 部屋の広さや日当たりに差があると不満が出やすい。 | 全ての個室の条件がほぼ同じ場合。 |
傾斜配分 | 部屋の条件差や収入差に応じて調整でき、不公平感をなくせる。 | 計算や管理が少し複雑になる。 | 部屋の広さや設備に明らかな差がある場合。社会人と学生でルームシェアする場合。 |
光熱費・通信費の支払い担当と精算方法
家賃と違い、毎月変動する費用は管理方法を決めておかないと不透明になりがちです。
- 支払い担当者を決める
- 電気、ガス、水道、インターネットなど、項目ごとに支払いの名義人・担当者を決めます。
- 精算方法を決める
- 毎月精算型: 担当者が立て替え、明細を全員に共有して月末に精算する。
- 共同口座型: 全員で毎月一定額(例:1人1万円)を共同の財布や口座に入れ、そこから支払う。最も公平で管理が楽なためおすすめです。
初期費用(敷金・礼金等)の分担と退去時の原状回復費用の積立
初期費用は大きな金額になるため、誰がいくら負担するのか明確にしましょう。基本的には均等割ですが、退去時の敷金の返還についても話し合っておく必要があります。
また、退去時のクリーニング代や修繕費(原状回復費用)で揉めないために、月々1,000円〜2,000円程度の「共同積立金」を始めることを推奨します。
毎日の暮らしを円満にする生活ルール
お金の次にトラブルになりやすいのが、日々の生活習慣の違いです。
掃除・ゴミ出しの分担(当番制?気づいた人がやる?)
「気づいた人がやる」というルールは、結局「いつも同じ人ばかりやっている」という不満につながります。
- 場所分担制: 「Aさんはお風呂・トイレ、Bさんはキッチン」のように担当箇所を決める。
- 曜日当番制: 「今週はAさん、来週はBさん」と、週替りで全ての共有スペースの掃除を担当する。
ゴミ出しも同様に、当番を決めておくとスムーズです。
友人の招待・宿泊のルール(事前連絡は必要?頻度は?)
自分にとっては友人でも、同居人にとっては他人です。プライバシーを守るためにも、明確なルールを設けましょう。
- 事前連絡は必須: 誰かを部屋に呼ぶ際は、必ず事前に同居人全員に連絡・相談する。
- 宿泊のルール: 恋人や友人の宿泊はトラブルの元になりやすいため、そもそも許可するのか、許可する場合は月に何日まで、何人までといった上限を設けるのか、全員の意見を確認しておきましょう。
共有スペース(LDK、風呂、トイレ)の使い方
共有スペースはみんなのものです。私物を置きっぱなしにしない、使った食器はすぐに洗うなど、基本的なマナーを再確認しましょう。トイレットペーパーや洗剤といった消耗品の補充ルール(切らした人が買う、ストック場所を決めておくなど)も決めておくと、小さなストレスがなくなります。
もしもの時のための「解散ルール」
考えたくないことですが、転勤、結婚、転職、あるいは人間関係の変化など、誰かが途中で退去する可能性はゼロではありません。契約上の責任問題に直結するため、必ず事前に話し合っておきましょう。
- 予告期間: 退去したい場合は、最低でも1ヶ月前、できれば2〜3ヶ月前に他のメンバーに意思表示する。
- 費用負担: 契約期間内の解約で違約金が発生した場合の負担割合を決めておく。
- 後任探しの協力義務: 抜ける人は、自分の代わりとなる新しい入居者探しに協力する義務を負う。
安心のための「ルームメイト契約書」を作成しよう
口約束だけでは、時間が経つと忘れてしまったり、「そんなつもりで言ったんじゃない」と解釈の違いが生まれたりします。
法的な強制力はなくても、話し合ったルールを「ルームメイト契約書」として書面に残し、全員で署名・捺印しましょう。これは、お互いの認識を合わせ、トラブル時に立ち返るための「お守り」になります。
- 契約日、契約者全員の氏名・住所・連絡先
- 物件の住所・家賃
- 家賃・共益費の分担額と支払日
- 光熱費・通信費の分担方法と精算ルール
- 初期費用・退去費用の分担について
- 家事の分担ルール
- 共有スペースの利用ルール
- 友人の訪問・宿泊に関するルール
- 途中解約する場合のルール(予告期間、費用負担など)
- その他特記事項
【物件選び編】失敗しないルームシェア賃貸の選び方と探し方

ルール作りができたら、いよいよ物件探しです。ルームシェアの成否は、物件選びにかかっていると言っても過言ではありません。全員のライフスタイルに合い、プライバシーも確保できる理想の物件を見つけるための知識と技術をお伝えします。
ルームシェア成功を左右する間取りの選び方
お互いのプライベートな時間を尊重できる「個室」の確保は絶対条件です。
- 2LDK/2DK
- 最も理想的な間取り。それぞれに個室を確保しつつ、共有のLDK(リビング・ダイニング・キッチン)でコミュニケーションも取れます。
- 1LDK+S
- 「S」はサービスルーム(納戸)のこと。窓がないなどの理由で居室とは表示できませんが、広さや形によっては十分に個室として使えます。家賃を抑えたい場合の狙い目です。
プライバシー確保!個室の必須条件とリビングの役割
快適なルームシェアのためには、プライバシーの確保が何よりも重要です。
- 騒音トラブルを防ぐ部屋の配置(リビングを通らずに個室へ行けるか)
- おすすめは、玄関から各個室が独立している「振り分けタイプ」の間取りです。リビングを通らないと他の個室に行けない間取りだと、友人が来ている時や、生活時間帯が違う場合に気を遣うことになります。また、個室同士が隣接していない、または収納を挟んでいるような配置だと、生活音が響きにくく快適です。
- 公平性を保つための部屋の広さと収納の確認
- 「片方の部屋だけ狭い」「収納がほとんどない」といった不公平は、後々の不満につながります。内見時にメジャーを持参し、各部屋の広さや収納の容量を実際に測って比較しましょう。
共有スペースで絶対に確認すべき設備
内見は必ず全員で行き、それぞれの目線でチェックすることが大切です。以下のリストを参考に、隅々まで確認しましょう。
- キッチン
- コンロは二口以上あるか?
- 調理スペースは十分か?
- 冷蔵庫を置くスペースは人数分(または大型サイズ)を想定できるか?
- 食器棚や食品をストックする収納はあるか?
- 水回り
- 独立洗面台はあるか?(朝の混雑を避ける最重要設備!)
- トイレと風呂は別か?(セパレートタイプが望ましい)
- 洗濯機置き場は室内にあるか?
- 脱衣所にタオルや着替えを置くスペースはあるか?
- その他
- 各個室にエアコンは設置されているか?
- 全員の靴が収まるシューズボックスはあるか?
- インターネット回線の種類と速度は?(光回線が引けるか)
- コンセントの位置と数は十分か?(各部屋・共有スペース)
- 壁は薄くないか?(隣の部屋の音が聞こえないか軽くノックして確認)
【契約・審査編】ルームシェア賃貸の契約をスムーズに進める
理想の物件が見つかったら、最後の関門である契約と審査です。ルームシェアの契約は少し特殊なため、知識がないと不安になるかもしれません。審査のポイントから契約形態の違いまで、安心して進めるための全知識を解説します。
「代表者契約」と「連名契約」どちらを選ぶべき?メリット・デメリットを徹底比較
ルームシェアの契約形態は主に2つ。どちらになるかは大家さんや管理会社の意向によりますが、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
契約形態 | 概要 | メリット | デメリット |
代表者契約 | メンバーのうち1人が代表して契約者となり、他の人は「同居人」として扱われる。 | ・手続きが比較的シンプル。・必要書類が代表者中心で済む場合がある。 | ・全責任が代表者1人に集中する(家賃滞納、トラブルなど)。・代表者が退去すると、原則として全員退去となる。 |
連名契約 | 入居者全員がそれぞれ契約者となり、契約書に署名・捺印する。 | ・全員が当事者となり、責任の所在が明確で公平。・大家さん側のリスクが減るため、審査に通りやすい傾向がある。 | ・全員分の書類が必要で、手続きが煩雑になる。・メンバーの1人が抜ける際も、全員の合意や再契約が必要になる場合がある。 |
手続きは大変ですが、責任が公平に分散され、大家さんからの信頼も得やすい「連名契約」が、友人同士のルームシェアにはおすすめです。
ルームシェア賃貸の入居審査は厳しい?大家さんが懸念する点と対策
大家さんがルームシェアで懸念するのは、主に以下の2点です。
- 家賃滞納リスク
- 学生や若手社会人の場合、支払い能力に不安を感じられることがあります。
- トラブルリスク
- 友人同士の騒音や、人間関係の悪化による短期解約を心配しています。
この不安を払拭するために、以下の対策が有効です。
- 支払い能力を証明する
- 全員の収入証明書を提出し、「全員の収入を合算すれば、家賃の支払い能力は十分にある」ことをアピールしましょう。
- 連帯保証人を立てる
- それぞれが親族などの安定した収入のある連帯保証人を立てることで、大家さんの安心感は格段に高まります。難しい場合は、保証会社を利用します。
- 誠実な態度を見せる
- 不動産会社への相談や内見の際に、しっかりとした受け答えをし、「私たちはルールを守って暮らせる社会人です」という姿勢を示すことも、意外と重要なポイントです。
契約時に必要な書類一覧と初期費用の内訳
契約時には多くの書類と費用が必要になります。慌てないように、事前に準備しておきましょう。
- 住民票
- 印鑑登録証明書
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 収入証明書(源泉徴収票、課税証明書など)
- 連帯保証人の関連書類(印鑑証明、収入証明など)
一般的に「家賃の4〜6ヶ月分」が目安です。
- 敷金(家賃1〜2ヶ月分)
- 礼金(家賃0〜2ヶ月分)
- 仲介手数料(家賃0.5〜1ヶ月分 + 消費税)
- 前家賃(入居する月の家賃)
- 日割家賃(月の途中から入居する場合)
- 火災保険料(1.5〜2万円程度)
- 鍵交換費用(1.5〜2.5万円程度)
- 保証会社利用料(家賃0.5〜1ヶ月分 or 総賃料の30〜100%)
これらの費用を誰がいつまでに用意するのか、事前にしっかり計画を立てておきましょう。
「二人入居可」と「ルームシェア可」は違う?不動産会社への確認ポイント
物件情報サイトでよく見る「二人入居可」という表記。これはルームシェア可能という意味とは限りません。
多くの場合、「二人入居可」は夫婦や親子、兄弟姉妹といった親族関係を想定しており、友人同士は対象外というケースが少なくありません。
気になる物件が「二人入居可」となっていたら、必ず不動産会社に「友人同士のルームシェアでの入居は可能ですか?」と明確に確認しましょう。
「ルームシェア不可」の賃貸物件が多い理由と交渉の余地
そもそも、なぜ「ルームシェア不可」の物件が多いのでしょうか。それは大家さん側のリスクを避けるためです。理由としては以下のものが考えられます。
- トラブル時の責任の所在が曖昧になりやすい。
- 生活時間帯の違う若者が集まると、騒音トラブルにつながりやすい。
- 人間関係が悪化し、短期で解約されるリスクが高い。
まとめ

友人とのルームシェアは、人生の中でも楽しい経験になる可能性を秘めています。その成功の鍵は、特別なテクニックよりも、「事前のルール作り」と「正直なコミュニケーション」に尽きます。
この記事で解説した、準備、物件選び、契約の各ステップは、友人との信頼関係をしっかりと守りながら、新生活をスムーズに始めるための羅針盤となるはずです。
不安な点や面倒な手続きも、友人と協力して乗り越えれば、それは二人の絆をさらに深める共同作業になります。この記事を参考に、最高の友人と、最高のルームシェアライフをスタートさせてください!