賃貸の専有部分とは?共用部分との違いを解説!

賃貸物件でよく聞く「専有部分」と「共用部分」。この違いが曖昧なために「バルコニーに物を置いていいの?」「エアコンが壊れた時の連絡先は?」といった疑問や不安を感じていませんか?ルールを知らないままだと、思わぬ修繕費用の負担や近隣トラブルの原因になることも。

この記事では、賃貸における専有部分と共用部分の具体的な範囲を、玄関ドアや窓、バルコニーなど判断に迷いがちな場所を例に挙げて分かりやすく解説します。

目次

そもそも賃貸の「専有部分」とは?共用部分との基本的な違い

賃貸物件での快適な暮らしは、まず「専有部分」と「共用部分」という2つのエリアの基本的な違いを理解することから始まります。この区別が、日々のルールやトラブル時の責任範囲を決める大原則となるため、しっかり押さえておきましょう。

専有部分とは「契約者だけが自分専用で使える空間」のこと

専有部分とは、かんたんに言えば「賃貸借契約を結んだあなただけが、自分専用で使える居住スペース」のことです。具体的には、玄関のドアを開けて入った「部屋の内側」の空間全体を指します。

キッチンで料理をしたり、お風呂に入ったり、リビングでくつろいだり、寝室で眠ったり…といった、あなたのプライベートな生活が営まれる場所が専有部分です。この空間内では、他の入居者に気兼ねなく、契約の範囲内で自由に使用することができます。

共用部分とは「アパート・マンションの入居者全員で使う空間」のこと

一方、共用部分とは「同じ建物に住む入居者全員が、共同で利用するスペースや設備」を指します。あなたが自分の部屋(専有部分)にたどり着くまでに通る場所をイメージすると分かりやすいでしょう。

例えば、建物のエントランス、廊下、階段、エレベーター、ゴミ置き場などがこれにあたります。これらは、入居者全員が気持ちよく使えるように、ルールやマナーを守って利用することが求められます。

分譲マンションと賃貸物件では所有の考え方が異なる

ここで一つ注意したいのが、分譲マンションと賃貸物件での考え方の違いです。

分譲マンションでは、部屋の所有者たちが「管理組合」を作り、「区分所有法」という法律に基づいて建物を共同で管理します。

しかし、あなたが住んでいるのが賃貸物件の場合、建物の所有者は大家さん(貸主)です。あなたは大家さんと「賃貸借契約」を結び、その建物の一部(専有部分)を借りている、という立場になります。

そのため、賃貸物件におけるルールは、法律だけでなく「大家さんの意向」や「賃貸借契約書の内容」が非常に重要になります。この記事では、この「賃貸物件」のケースに絞って、さらに詳しく解説していきます。

賃貸の専有部分とはどこまで?判断に迷う範囲を解説

「専有部分」と「共用部分」の基本的な意味は分かっても、実際に「この場所はどっち?」と判断に迷うケースは多いものです。ここでは、特に間違いやすい場所をピックアップし、どちらに分類されるのかを分かりやすく解説します。

【一覧表で早わかり】専有部分と共用部分の具体例

まずは、主な場所がどちらに分類されるのか、一覧表で全体像をつかみましょう。

場所・設備分類
室内の壁・床・天井(内側)専有部分壁紙やフローリングなど表面部分。
キッチン・トイレ・浴室専有部分室内にある水回り設備。
クローゼット・収納専有部分部屋に備え付けの収納。
玄関ドアの内側専有部分室内側の塗装面など。
エントランス・集合ポスト共用部分入居者全員が利用する。
廊下・階段・エレベーター共用部分移動のための共用スペース。
建物の外壁・屋上・基礎共用部分建物全体の構造に関わる部分。
ゴミ置き場・駐輪場共用部分
玄関ドアの外側・鍵共用部分防犯や建物の統一性のため。
窓ガラス・サッシ・網戸共用部分外壁の一部と見なされる。
バルコニー・ベランダ共用部分ただし「専用使用権」あり。

※これは一般的な区分です。最終的には賃貸借契約書の記載が優先されます。

判断に迷う場所①:玄関ドア・鍵(内側は専有、外側と鍵は共用)

玄関ドアは、専有部分と共用部分が混在する代表的な場所です。

一般的に、室内側の塗装面や飾り付けができる部分は「専有部分」、廊下に面した外側の部分と、ドア本体、そして鍵(シリンダー)は「共用部分」とされています。

これは、建物の外観の統一性を保ち、防犯性能を維持するために、大家さんが一括で管理する必要があるためです。したがって、「鍵を失くした」「鍵の調子が悪い」といった場合は、自己判断で業者を呼ばず、まずは管理会社や大家さんに連絡しましょう。

判断に迷う場所②:窓ガラス・サッシ・網戸(原則として共用部分)

窓ガラスやサッシ、網戸も、建物の外壁の一部と見なされるため、原則として「共用部分」に含まれます。

「台風で窓ガラスが割れた」「サッシが歪んで窓が閉まらない」といった自然災害や経年劣化による不具合は、大家さんの責任で修繕されるのが一般的です。

ただし、あなたが誤って物をぶつけて割ってしまった場合は、自己負担での修理となる可能性が高いので注意しましょう。

判断に迷う場所③:バルコニー・ベランダ

バルコニーやベランダは、意外に思われるかもしれませんが「共用部分」です。

ただし、その部屋の入居者だけが使えることから「専用使用権」が認められています。

なぜ共用部分かというと、火災など緊急時の「避難経路」としての役割を兼ねているためです。そのため、以下のような行為は禁止されていることがほとんどです。

  • 隣の部屋との仕切り板(隔て板)の前に大きな物を置く
  • 避難はしごのハッチの上に物を置く
  • 大量の土砂を使う本格的なガーデニング
  • 許可なくサンルームなどを設置する

「洗濯物を干す」「ちょっとしたガーデニングを楽しむ」といった常識の範囲内での使用は問題ありませんが、あくまで”借りている共用スペース”という認識を持つことが大切です。

判断に迷う場所④:インターホン・火災報知器

室内に設置されているテレビモニター付きインターホンや、天井にある火災報知器。これらも、建物全体の防犯・防災システムの一部であるため、「共用部分」として扱われることがほとんどです。

「インターホンの映りが悪い」「火災報知器が誤作動した」といった場合は、自分でいじらずに管理会社や大家さんに連絡して対処してもらいましょう。

判断に迷う場所⑤:壁・床・天井(表面は専有、内部の躯体は共用)

壁・床・天井の扱いは少し複雑です。壁紙(クロス)やフローリング、カーペットといった「表面の仕上げ材」は「専有部分」に含まれます。

一方で、その内側にあるコンクリートの壁や柱、床スラブといった建物の構造に関わる部分(躯体)は「共用部分」です。

そのため、画鋲でポスターを貼る程度なら問題ありませんが、躯体に影響するような重い棚の設置や、勝手に壁紙を張り替えるといった行為は、契約違反になる可能性があるので注意が必要です。

専有部分と共用部分で異なる責任範囲と修繕費用

専有部分と共用部分の区別が最も重要になるのが、何らかのトラブルが発生した時です。特に「誰がその修理費用を負担するのか」は、生活に直結する大きな問題。ここでは、よくあるトラブル事例をもとに、責任範囲の考え方を解説します。

修繕の基本ルール:「経年劣化」は大家負担、「故意・過失」は入居者負担

まず、修繕における大原則を覚えておきましょう。

  • 経年劣化による故障・不具合:大家さん(貸主)の負担
    • 普通に使っていて自然に壊れた場合。
    • 例:給湯器が古くなってお湯が出なくなった、備え付けエアコンが寿命で動かなくなった、など。
  • 入居者の故意・過失による故障・破損:入居者(借主)の負担
    • うっかりミスや不注意、通常とは異なる使い方で壊してしまった場合。
    • 例:物をぶつけて窓ガラスを割った、掃除を怠って排水溝を詰まらせた、など。

入居者には、借りた部屋を善良な管理者として注意を払って使用する義務(善管注意義務)があります。この義務に違反したと判断されると、修理費用を請求されることがあるのです。

ケーススタディ①:水漏れが発生!原因箇所で負担者が決まる

水漏れは、原因の特定が非常に重要です。

  • 自分の専有部分が原因の場合(蛇口の閉め忘れ、洗濯機のホース外れなど)
    • あなたの責任となります。自分の部屋の床や家財だけでなく、下の階にまで被害が及んだ場合は、その損害賠償責任も負うことになります。
  • 共用部分が原因の場合(建物全体の排水管の詰まりや劣化など)
    • 大家さんの責任となります。速やかに管理会社や大家さんに連絡し、対応してもらいましょう。
  • 上の階の入居者が原因の場合
    • 上の階の入居者の責任となります。ただし、直接交渉はせず、必ず管理会社や大家さんに間に入ってもらいましょう。

ケーススタディ②:壁にカビが発生!結露対策を怠ると入居者責任も?

カビの発生も、責任の所在が問われるトラブルの一つです。

  • 建物の構造的な問題(雨漏り、壁の断熱不良など)が原因の場合
    • 大家さんの責任で修繕や対策が行われます。
  • 入居者の生活スタイルが原因の場合(換気をしない、結露を放置するなど)
    • 入居者の責任と見なされる可能性があります。日頃からこまめに換気したり、窓の結露を拭き取ったりするなどの「善管注意義務」を怠ったと判断されると、退去時に壁紙の張り替え費用などを請求されることがあります。

ケーススタディ③:備え付けエアコンの故障。修理費は誰が払う?

備え付けのエアコンが故障した場合も、原因によって負担者が変わります。

  • 経年劣化や自然故障の場合
    • 大家さんの負担で修理・交換されます。10年以上前の古い機種であれば、経年劣化の可能性が高いでしょう。
  • 入居者の使い方が原因の場合
    • 入居者の負担になる可能性があります。例えば、フィルターの掃除を長期間怠ったことが原因で故障した場合などがこれにあたります。定期的なフィルター掃除は、入居者が行うべきメンテナンスです。

もしもの時に役立つ「火災保険(借家人賠償責任保険)」とは

賃貸契約時に加入が義務付けられていることが多い「火災保険」。これは、火災だけでなく、様々なトラブルからあなたを守ってくれる重要な保険です。

特に注目したいのが「借家人賠償責任保険」という補償です。

これは、あなたが原因で水漏れを起こしてしまい、大家さんに対して部屋の修繕費用を賠償しなければならなくなった場合などに、保険金が支払われるものです。万が一の大きな出費に備えるためにも、自分が加入している保険の内容を一度確認しておくことを強くおすすめします。

賃貸借契約書で確認すべき専有部分のチェックポイント

これまで解説してきた内容は、あくまで一般的なルールです。最終的には、あなたと大家さんが交わした「賃貸借契約書」の内容がすべてに優先されます。 トラブルを未然に防ぎ、安心して新生活を始めるために、契約前に以下のポイントを必ず確認しましょう。

「賃貸借契約書」と「重要事項説明書」の記載を確認

契約時には、必ず「賃貸借契約書」と、不動産会社が説明する「重要事項説明書」に目を通します。特に以下の項目はしっかり確認しましょう。

  • 修繕に関する項目
    • どちらがどの部分の修繕費用を負担するのかが明記されています。「畳の表替え」「鍵の交換費用」など、細かい部分の負担者が決められていることもあります。
  • 設備に関する項目
    • 部屋に設置されているエアコンや給湯器などが「設備」なのか、前の入居者が残していった「残置物」なのかを確認します。「残置物」の場合、故障しても大家さんに修理義務はありません。
  • 禁止事項
    • ペット飼育、楽器演奏、DIYの可否など、専有部分での生活に関するルールが書かれています。

「特約事項」に独自のルールがないか必ずチェックしよう

契約書の最後の方にある「特約事項」は特に注意が必要です。ここには、一般的なルールとは異なる、その物件独自のローカルルールが記載されていることがあります。

例えば、「退去時のクリーニング費用は、理由に関わらず借主の負担とする」といった特約が代表的です。内容に疑問があれば、署名・捺印する前に必ず質問しましょう。

トラブルを未然に防ぐ!内見時に確認・質問しておくべきこと

書類だけでなく、物件の内見時にも確認できることはたくさんあります。

  • 設備の年式や状態
    • エアコンや給湯器に製造年が書かれたシールが貼ってあります。あまりに古い場合は、入居後の故障リスクについて質問してみましょう。
  • 壁の状態
    • 目立つ傷や汚れがないか確認し、あれば写真に撮っておくと、退去時のトラブル防止になります。
  • 共用部分の使い方
    • 廊下や駐輪場がきれいに使われているか、私物が放置されていないかなどを見ると、その物件の管理状態や入居者のマナーがある程度わかります。

不明点があれば遠慮なく不動産会社や大家さんに質問する

契約書の内容や物件の状態で少しでも「あれ?」と思うことがあれば、遠慮せずに不動産会社の担当者に質問してください。「こんなこと聞いてもいいのかな?」とためらう必要は一切ありません。

後々の「言った、言わない」というトラブルを防ぐためにも、納得できるまで説明を求め、可能であれば回答を書類に書き込んでもらうとより安心です。

まとめ

今回は、賃貸物件における「専有部分」と「共用部分」の違いについて、具体的な場所やトラブル事例を交えながら解説しました。

最後に、重要なポイントを振り返っておきましょう。

  • 専有部分は「あなただけが使える部屋の内側」、共用部分は「入居者全員で使う場所」。
  • バルコニーや備え付け設備など、判断に迷う場所は共用部分として扱われることが多い。
  • 修繕費用は「経年劣化なら大家負担」「あなたの不注意なら自己負担」が基本。
  • DIYや工事など、現状を変える行為は必ず事前に大家さん・管理会社の許可が必要。

この区別をしっかり理解しておくことで、予期せぬ費用負担や近隣トラブルを避け、安心して賃貸生活を送ることができます。

そして何より大切なのは、「困ったり、迷ったりしたら、まず賃貸借契約書を確認し、管理会社や大家さんに相談する」ことです。自己判断で行動する前に、このワンクッションを置く習慣が、あなたの快適で安心な暮らしを守る最大の鍵となります。

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