賃貸物件の「管理費」って何?共益費との違いは?と疑問に思っていませんか。この記事では、管理費の気になる使い道から共益費との違い、適正な相場、そして「管理費なし」物件の注意点まで解説します!
家賃以外にかかる費用の仕組みを正しく知ることで、より自分にピッタリのお部屋を探しましょう!
賃貸の「管理費」とは?共益費との基本的な違いを解説
まずは、多くの人が疑問に思う「管理費ってそもそも何?」「共益費と何が違うの?」という点について解説いたします。
管理費とは入居者が快適に暮らすための「共用部分の維持費」
賃貸の管理費とは、ひとことで言えば「マンションやアパートの共用部分を維持・管理するために使われる費用」のことです。
共用部分とは、エントランスや廊下、階段、エレベーター、ゴミ置き場など、入居者全員が共同で使うスペースのこと。これらの場所をきれいに清掃したり、電球が切れたら交換したり、設備が壊れたら修理したりと、入居者が毎日を快適かつ安全に過ごせるように建物をメンテナンスするために使われます。
つまり管理費は、あなたが住む部屋(専有部分)のためではなく、建物全体の住環境を良好に保つために、入居者みんなで少しずつ負担し合う必要経費なのです。
共益費との違いは?法律上の定義はなく「ほぼ同じ意味」で使われる
物件情報を見ていると、「管理費」と書かれている物件もあれば、「共益費」と書かれている物件もありますよね。この二つに明確な違いはあるのでしょうか。
結論から言うと、法律上の厳密な定義はなく、不動産業界の慣習としても「ほぼ同じ意味」で使われているのが実情です。
あえてニュアンスの違いを挙げるなら、
- 共益費
- 共用部分の電気代や水道代、清掃費といった「実費」に近い費用。
- 管理費
- 上記の共益費の内容に加え、建物を管理する管理人さんの人件費や管理会社への手数料まで含んだ、より広い意味。
といった使い分けをされることもありますが、不動産会社によって解釈はバラバラです。ですから、物件を探す私たちにとっては「管理費も共益費も、共用部分の維持管理に使われる同じ性質のお金」と捉えておけば問題ありません。
あなたの払う賃貸の管理費とは何に使われる?

「管理費が共用部分の維持費なのは分かったけど、具体的には何に使われているの?」
自分が払うお金が何に使われるのか、その内訳はしっかり知っておきたいもの。ここでは、管理費の具体的な使い道を4つのカテゴリに分けて、詳しく見ていきましょう。
①建物の清掃や衛生管理に関わる費用
入居者が毎日気持ちよく過ごせるよう、建物を清潔に保つための費用です。
- 日常清掃
- エントランス、廊下、階段などの掃き掃除や拭き掃除。
- 定期清掃
- ポリッシャーを使った床の洗浄やワックスがけ、窓ガラスの清掃など、日常清掃では行わない特別な清掃。
- ゴミ置き場の管理
- ゴミの分別整理、カラス除けネットの設置、清掃など。
- 植栽の手入れ
- 敷地内の植木や草花の剪定、水やり、除草作業。
物件の共用部分がいつもきれいに保たれているのは、こうした清掃・管理業務のおかげなのです。
②エレベーターやオートロックなど設備の保守点検・メンテナンス費用
安全な暮らしを守るため、建物の様々な設備を定期的に点検し、維持するための費用です。特に、エレベーターやオートロックなどの設備が充実しているマンションほど、この項目にかかる費用は大きくなる傾向があります。
- エレベーターの保守点検
- 法律で定められた定期的な点検やメンテナンス。
- オートロック、宅配ボックスの維持管理
- 正常に作動するための点検や修理費用。
- 消防設備の点検
- 火災報知器や消火器、避難はしごなどの法定点検。
- 貯水槽・浄化槽の清掃・点検
- 飲み水を衛生的に保つための貯水槽清掃や、排水設備である浄化槽の点検。
- 共用部分の電球交換
- 廊下や階段の切れた電球の交換費用。
もしエレベーターが故障したり、火災報知器が作動しなかったりしたら大変ですよね。管理費は、こうした「もしも」を防ぎ、安全を守るための保険料のような役割も果たしています。
③廊下やエントランスなど共用部分の光熱費
入居者が個人で契約する電気や水道とは別に、共用部分で使われる光熱費も管理費から支払われます。
- 電気代
- エントランスの照明、常夜灯、廊下や階段の電気、エレベーターを動かす電力など。
- 水道代
- 共用部分の清掃で使う水や、植栽への水やりなど。
夜、暗い廊下を安全に歩けるのも、管理費があるからこそなのです。
④管理人や管理会社への業務委託に関わる費用
大家さん自身が建物を管理している場合もありますが、多くの物件では管理業務をプロの管理会社に委託しています。
- 管理人さんの人件費
- 日中、エントランスに常駐して受付業務や見回り、簡単な清掃などを行ってくれる管理人さんがいる場合、その給与は管理費から支払われます。
- 管理会社への委託手数料
- 上記で説明したような清掃や点検の手配、入居者からの相談対応、トラブル対応などを大家さんに代わって行う管理会社へ支払う手数料です。
専門の管理会社が入っている物件は、トラブルが起きた際の対応が迅速でスムーズなことが多いというメリットがあります。
賃貸物件の管理費の相場とは?家賃との関係と損しない考え方
管理費の内訳が分かると、次に気になるのは「じゃあ、いくらくらいが普通なの?」という金額の相場ですよね。ここでは、管理費の相場と、物件選びで損をしないための重要な考え方について解説します。
管理費の相場は家賃の5%~10%が目安
物件のグレードや設備によって大きく異なりますが、一般的に賃貸物件の管理費の相場は、家賃の5%~10%程度と言われています。
家賃 | 管理費の相場(5%~10%) |
6万円 | 3,000円 ~ 6,000円 |
8万円 | 4,000円 ~ 8,000円 |
10万円 | 5,000円 ~ 10,000円 |
12万円 | 6,000円 ~ 12,000円 |
ただし、これはあくまで目安です。例えば、以下のような物件は管理費が高くなる傾向があります。
- 設備が充実している
- エレベーター、オートロック、宅配ボックス、24時間ゴミ出し可能なゴミ置き場など。
- グレードが高い
- タワーマンション、デザイナーズマンションなど。
- 管理人が常駐している。
逆に、エレベーターのないアパートなど、共用設備が少ない物件は管理費が安くなるか、設定されていない場合もあります。
なぜ家賃と管理費は分かれている?募集上の理由と仕組み
「内訳は分かったけど、最初から家賃に含めてくれれば分かりやすいのに…」と感じませんか?家賃と管理費を分けて表示するのには、主に物件を募集する上での「見せ方」の理由があります。
多くの不動産情報サイトでは、「家賃〇〇円以下」という条件で物件を検索しますよね。このとき、管理費は検索条件の対象外になることがほとんどです。
例えば、「家賃8万円以下」で探している人に対して、
- A物件:家賃8万円、管理費5,000円
- B物件:家賃8.5万円、管理費0円
この2つの物件は月々の支払額が同じ8.5万円ですが、検索結果に表示されるのはA物件だけです。つまり、家賃を低く見せることで、より多くの人の目に触れる機会を増やしたいという募集側の意図があるのです。
物件選びは「家賃+管理費の総額」で判断しよう
上記の理由からも分かる通り、物件選びで重要なポイントは、家賃の安さだけで判断せず、必ず「家賃+管理費」の月々の総支払額で比較検討することです。
- 物件A
- 家賃 78,000円 / 管理費 7,000円 → 総額 85,000円
- 物件B
- 家賃 82,000円 / 管理費 2,000円 → 総額 84,000円
この場合、家賃だけ見ると物件Aの方が安いですが、毎月の支払いを考えると物件Bの方が1,000円お得ですよね。
物件情報を見るときは、家賃の金額に惑わされず、必ず管理費(または共益費)の項目もチェックし、電卓で「総額」を計算するクセをつけましょう。これが、賢く物件を選ぶための第一歩です。
賃貸の「管理費なし(0円)」の物件とは?メリットと初期費用の注意点

物件を探していると、「管理費なし」または「管理費0円」という魅力的な物件に出会うことがあります。これは本当にお得なのでしょうか?ここでは、そのカラクリと注意点を解説します。
管理費なし物件のカラクリは「家賃への上乗せ」がほとんど
まず大前提として、「管理費0円」だからといって、建物の管理が一切行われていないわけではありません。大家さんはボランティアではないので、清掃や点検にかかる費用を必ずどこかで回収する必要があります。
その答えはシンプルで、ほとんどの場合、管理費に相当する金額がもともとの家賃に上乗せされているだけです。
- 通常の物件
- 家賃 75,000円 + 管理費 5,000円 = 総額 80,000円
- 管理費0円の物件
- 家賃 80,000円 + 管理費 0円 = 総額 80,000円
このように、月々の支払総額は同じになるケースがほとんど。「管理費がないからお得!」と単純に飛びつくのは早計です。
メリット:月々の支払項目がシンプルで分かりやすい
とはいえ、管理費0円の物件にメリットが全くないわけではありません。メリットは、月々の支払いが家賃のみとなり、シンプルで分かりやすい点です。家計の管理がしやすいと感じる人もいるでしょう。
また、共用設備がほとんどないアパートなど、そもそも管理にかかる費用が少ないために、家賃に含めて募集しているケースもあります。
賃貸の管理費に関するよくある質問(Q&A)

最後に、管理費に関して多くの人が抱きがちな細かい疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q. 管理費の値下げ交渉はできますか?
A. 家賃に比べて難しいですが、可能性はゼロではありません。
管理費は、建物の維持管理に必要な費用として実費ベースで算出されていることが多いため、家賃のように「大家さんのさじ加減」で値下げするのは難しいのが一般的です。
しかし、長期間空室が続いている物件や、引っ越しの閑散期(6月~8月など)であれば、交渉の余地が生まれることもあります。ダメ元で「家賃と管理費を合わせて〇〇円になりませんか?」と総額で相談してみるのが良いでしょう。
Q. 管理費に消費税はかかりますか?
A. いいえ、居住用の賃貸物件であれば管理費・共益費に消費税はかかりません(非課税です)。
家賃と同様に、人が住むための物件の費用は非課税と法律で定められています。ただし、事務所や店舗として借りる事業用物件の場合は、家賃・管理費ともに消費税の課税対象となります。
Q. 入居後に管理費が値上がりすることはありますか?
A. 契約書の内容によっては、値上がりする可能性はあります。
例えば、消費税の増税や、周辺の物価・光熱費の大幅な高騰などを理由に、管理費が改定されるケースは考えられます。ただし、大家さんが一方的に値上げできるわけではなく、入居者の合意が必要です。
念のため、契約前に賃貸借契約書に「管理費を改定する場合がある」といった趣旨の条項がないか、確認しておくとより安心です。不明な点があれば、契約前に不動産会社に質問しましょう。
Q. 「24時間サポート料」と管理費は何が違うのですか?
A. 管理費は「建物全体」の維持費、24時間サポート料は「あなた個人」のトラブル対応サービス料です。
これはよく混同されがちなポイントです。
- 管理費
- ここまで説明してきた通り、廊下の電球交換や清掃など、建物全体のメンテナンス費用です。
- 24時間サポート料
- 「鍵をなくした」「トイレが詰まった」「ガラスを割ってしまった」など、あなた自身の部屋(専有部分)で起きたトラブルに24時間体制で駆けつけてくれるサービスの利用料です。多くの場合、月々1,000円~2,000円程度の任意加入のオプションサービスとなっています。
両者は全くの別物ですので、混同しないようにしましょう。
まとめ

今回は、賃貸物件の「管理費」について、その意味から気になる使い道、相場、そして物件選びでの注意点までを詳しく解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- 管理費・共益費は、建物の共用部分を維持管理するための必要経費
- 具体的な使い道は、清掃、設備点検、共用部の光熱費など多岐にわたる
- 相場は家賃の5%~10%程度。設備が充実しているほど高くなる傾向
- 「管理費なし」は、家賃に上乗せされているだけで、初期費用が割高になる可能性に注意
- 重要なのは、家賃の安さに惑わされず『家賃+管理費の総額』で物件を比較すること
管理費は、決して「よく分からないけど取られるお金」ではありません。私たちが安全で快適な毎日を送るために、建物を陰で支えてくれている大切なお金です。
ぜひ今後の物件探しに役立ててください。あなたの納得のいく、素敵なお部屋が見つかることを心から応援しています!