「会社の社宅や事務所を借りたいけど、法人契約って何から始めればいいの?」
「手続きが面倒で審査も厳しいのでは?」
と、お悩みの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、賃貸の法人契約について、メリットから知っておくべきデメリット、個人契約との違いまでを解説します。
賃貸の法人契約とは?まず知りたい個人契約との違い
賃貸物件の契約方法には、大きく分けて「法人契約」と「個人契約」があります。
まずはその基本的な違いを理解し、自社にとってどちらが最適かを見極めましょう。
そもそも法人契約とは「法人が借主」となる賃貸借契約のこと
賃貸の法人契約とは、その名の通り、株式会社や合同会社といった法人が「借主(契約者)」となって、物件のオーナー(貸主)と賃貸借契約を結ぶことを指します。
この契約形態では、実際にその部屋に住むのは会社の役員や従業員ですが、契約上の名義や家賃の支払い義務はすべて法人にあります。社宅や社員寮、事務所として物件を借りる際に利用されるのが一般的です。
一方、個人契約は、入居する個人が自身の名前で契約を結び、家賃などの責任をすべて個人で負う契約です。これが一般的な賃貸契約の形となります。
賃貸の法人契約と個人契約の6つの違い
法人契約と個人契約の主な違いを以下の表にまとめました。
項目 | 法人契約 | 個人契約 |
契約名義人 | 法人(会社) | 入居する個人 |
家賃支払義務 | 法人が負う | 個人が負う |
審査の対象 | 法人の信用力(業績・事業内容・設立年数)+入居者の人物像 | 個人の信用力(年収・勤務先・勤続年数・保証人) |
主な必要書類 | 商業登記簿謄本、会社案内、決算書、法人印鑑証明書など | 住民票、身分証明書、収入証明書、個人の印鑑証明書など |
家賃の経費計上 | 可能(節税につながる) | 原則として不可 |
入居者の変更 | 契約内容次第で可能(社員の転勤などに対応しやすい) | 原則として不可(再度契約を結び直す必要がある) |
このように、契約の名義人が法人になるだけで、審査の対象から必要書類など多くの点で個人契約とは異なることがわかります。
法人契約が選ばれる主な理由
法人契約は、以下のような目的を持つ企業にとって非常に有効な手段です。
- 従業員の福利厚生を充実させたい(社宅・社員寮)
- 転勤が多い従業員の住居をスムーズに確保したい
- 役員社宅として活用し、節税対策をしたい
- 自宅兼事務所(SOHO)として利用し、家賃の一部を経費にしたい
これらの目的に一つでも当てはまる場合は、法人契約を積極的に検討する価値があるでしょう。
賃貸を法人契約するメリット
法人契約は、単に会社名義で部屋を借りられるだけでなく、経営上の様々なメリットをもたらします。ここでは、特に知っておきたいメリットを詳しく解説します。
社宅家賃を経費計上でき、高い節税効果が見込める
法人契約の最大のメリットは、家賃を会社の経費として計上できる点にあります。これは法人税の節税に直結するため、経営者にとって非常に重要です。
具体的には、会社が貸主へ家賃を支払い、入居する役員や従業員から一定額の家賃(賃貸料相当額)を受け取ります。この会社が負担する差額分を経費(福利厚生費など)として処理できます。
- 会社が貸主へ支払う家賃:150,000円
- 会社が従業員から徴収する家賃:75,000円
- 会社が経費として計上できる額:75,000円
この場合、年間で90万円(75,000円×12ヶ月)もの費用を経費にできるため、その分、法人税の課税対象となる所得を圧縮できます。
なお、従業員から徴収する「賃貸料相当額」が低すぎると、差額分が給与として扱われ、所得税の対象となる可能性があるため注意が必要です。徴収すべき家賃の計算には一定のルールがありますが、一般的には家賃の50%程度を徴収していれば問題ないとされています。正確な運用については、必ず税理士などの専門家にご相談ください。
入居者(従業員)の初期費用や家賃負担を大幅に軽減できる
通常、個人で賃貸契約を結ぶ際には、敷金、礼金、仲介手数料、前家賃などで家賃の4~6ヶ月分に相当する初期費用が必要になります。これは入居者にとって大きな経済的負担です。
法人契約の場合、これらの初期費用は法人が経費として負担するのが一般的です。また、前述の通り、家賃の一部を会社が負担するため、従業員が実際に支払う月々の家賃も安く抑えられます。この手厚いサポートは、従業員の生活の安定に直結し、仕事への集中力を高める効果も期待できます。
安定した支払い能力をアピールでき、審査で有利になる場合がある
貸主(大家さん)にとって最も懸念されるのは、家賃の滞納リスクです。その点、業績が安定している法人は、個人に比べて支払い能力が高いと判断されやすく、入居審査において有利に働くことがあります。
特に、資本金が大きく、設立年数が長い、あるいは事業内容が安定している大企業や中堅企業の場合は、個人契約よりもスムーズに審査を通過できる可能性が高いでしょう。
賃貸の法人契約で後悔しないためのデメリットと注意点
多くのメリットがある一方で、法人契約には特有のデメリットや注意点も存在します。事前にこれらを把握し、対策を講じることが、契約を成功させる鍵となります。
個人契約より手続きが複雑で、必要書類が多い
法人契約は、個人契約に比べて手続きが複雑で、提出を求められる書類も多くなります。企業の信頼性を証明する必要があるため、これは避けられないプロセスです。
- 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 法人印鑑証明書
- 会社概要がわかるもの(パンフレットやウェブサイトのコピー)
- 決算書(直近1~3期分)
- 法人の納税証明書
- 入居者の身分証明書・社員証のコピー
これらの書類は、発行から3ヶ月以内など有効期限が定められているものも多く、事前に準備しておく必要があります。特に決算期と重なる時期などは、書類の準備に時間がかかる可能性も考慮しておきましょう。
「法人契約不可」の物件もあり、部屋の選択肢が狭まる可能性
賃貸物件の中には、残念ながら「法人契約不可」としている物件も存在します。特に、個人が所有する分譲マンションの一室などは、オーナーの意向で法人契約が敬遠される傾向にあります。
そのため、個人契約に比べて物件の選択肢がやや狭まる可能性があることは念頭に置いておく必要があります。物件を探す際は、最初から不動産会社に「法人契約で社宅を探している」と伝え、対応可能な物件を中心に紹介してもらうのが効率的です。
まとめ

賃貸の法人契約は、手続きが複雑で準備に手間がかかるという側面はありますが、それを上回る「節税効果」「従業員満足度の向上」といった大きなメリットがあります。
デメリットや注意点も、事前に正しく理解し、対策を講じておけば、決して怖いものではありません。この記事で解説したポイントを押さえることで、貸主との交渉や審査をスムーズに進めることができるはずです。
法人契約を成功させる鍵は、何よりも「計画的な準備」と「信頼できる不動産会社との連携」です。
もし法人契約を検討しているなら、まずは法人契約の実績が豊富な不動産会社に相談し、自社の状況を伝えてみましょう。きっと、あなたの会社に最適な物件と契約プランを提案してくれるはず!
この記事が、その第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。